ブック1

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半年から襲いかかっていた寒さは薄れ、次第に日差しが天気の主役になりつつある四月はあらゆる人にとってスタートの時なわけで。

新生活 とりわけ十代とすれば新学期が一番身近だろう。


春から都内の高校に通っている天代 葵(アマシロ アオイ)は一般高校生だ

つまり目立ってスポーツに打ち込む事はなく、かと言ってとりわけ成績が言い訳ではない、むしろ中の下、もしくはそれ以下の低空飛行を続けていると自負している一般ピーポーはなはだしい高校生なわけで


今は絶賛五月の大型連休中なのだが入学早々の実力判断テストで惨敗したため早めに頭の中身を叩き治しておこうと言う学校側の粋な計らいで補習をとりおこなっているのだ。


彼の中で黄金週間と名付けられた大型連休のメッキは凄まじい速度で剥れていった。


教師は残業代が付かないのだったらやはり特別手当も無いんだろうか、いやいくらなんでもそれじゃあ割にあわなすぎるなんて考えながら適当に補習の先生兼担任の藤森先生の話し(青春時代のなんたら)を受け流す。


五月にしては暑い気温で風通しの悪いこの教室は早くも夏真っ盛りの様な蒸し暑さが訪れていた。


周りのクラスメイト達も暑さにやられ良く見ると先生の白いブラウス越しに透けて見える黒い下着をオアシスでも見つけた探検隊の様に見つめていた



『情けない。』


自然に口から出てしまったセリフに隣りのクラスメイトの蒼紫
燥麻 (アオシ ソウマ)が反応する


『あぁ、こんなにも下着を見せつけられて想像力を働かせることの出来ないヤツはもう出家したほうがいいな。』

いや違うだろ

そもそもそれは想像力ではなく妄想だし

あと一応坊さんに謝れ

全国の坊さんに謝れ

『そんなもんかな〜』


燥麻も暑さにやられたのか徐々に背を丸めながら机に突っ伏してゆく。


『しっかしこんな中途半端な時期に編入なんざご苦労なこって。』


『なんだそれ?』

なんでそんなステキイベントお前が知ってんだよまさかお前あれか今はやりのスパイか?スパイなんですか?


『あれれぃ、さては先生の話聞いて無かったなぁ、明日付で新しい友達が増えまぁっす…って言ってたぞい。』

その意味不明な言葉遣いはどう

にかならないのですか?

それに先生似てねぇよ


『そこらへんは気合いさね。これも先生がさっき言ってたぜい。』


『さっきからよく長々と話してられるよな』


まったくただ聴いてもいない話を延々と話されても暑苦しいだけなのに、20代前半とおぼしき新任のかわいらしい(ちゃっかり出るとこは出ている)先生は先ほどからずうっと話をされて…


いない


前の教壇にいたハズの藤森 雪奈(フジモリ ユキナ)24歳が何処かへ消えて…

『『ぎっぇぇ』』

殺気っ!!

ふたりが声にならない悲鳴をあげて振り返る…そこには


かわいらしい(はずの)顔に清楚な白ブラウスにスカートといった見た目どっかいいとこのお嬢様のような(はずの)藤森 雪奈が立っていた。


(何故か)眉をつり上げ(何故か)眉間にシワをよせ(何故か)青筋を立てた新任の先生がこちらを見て…いや狙っていた。


この暑いなか3限もぶっ通しで話を続けていた我らが愛すべき担任は自らの汗がにじみブラウスが透けて下着が見えているのに堂々と構えていた。






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