【批判の刃】



 学生たちは批判が苦手だ。というよりも、日本人は総じて批判を避けがちである。

 人から批判を受けることを快く思わない人が多いが、何とももったいないことだ。せっかく「批判してくれた」のに、その人と口を利かなくなる状況を何度も目にした。そういった批判嫌いがさらに悪化すると、批判を受けないよう前もって防衛線を張る。

 そうなると批判するほうも遠慮して批判しなくなる。批判されたくない、したがらないという悪環境のなかで、この社会からはますます批判が消えてゆく、そして、事なかれ主義が幅を利かせるのだ。

 どうも誤解されているようだが、批判は非難ではない。非難には、相手の人格の否定が含まれている。そこには相手を認めようとする姿勢は見られない。

 しかし、批判は違う。批判を意味するクリティシズムという英語はそもそも「(見)分ける」と言う意味だ。危機を意味するクライシスと同じ語源である。

 危機とはすなわち「分かれ目」。だから批判とは、良い部分と悪い部分を切り分けることなのだ。相手の悪い所にばかり目を向けているうちはまだまだ甘い。

 相手の良いところは積極的に評価できてこそ真の批判となる。別名、批評とも言われるわけだ。

 学生たちには、たくさん批判される研究発表をするよう勧めている。そして、他の人の研究発表にも、どんどん発言し、きちんと批判をするように指導している。

 人の仕事の良し悪しを見分けられない者にどうして良い仕事ができよう。批判し合う中で、さらに批判力を高め、互いを磨きあうのだ。

 だから批判には、愛がある。
相手を思って、良かれと思って言うのである。的確に切り分ける力を持つ批判の刃は確かに痛い。しかし、それは愛のムチに等しく、痛みのうちには入らない。本当に痛いのは批判を受けるのではなく、無視されてしまうことなのだから。
鹿児島大学法文学部准教授 西村 明
2008.10.24 南日本新聞 「南点」より 掲載


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